代車で普通のコンパクトカーに乗る
ロードスターが家に居ない日はいつぶりであろうか。
多分3年前の11月にボディーコーティングに出した時以来だと思う。
遂に新車登録から満3年、初回車検である。
代車はMC前の、1500ccのガソリンエンジンを積むMAZDA2だった。
エンジン形式こそロードスターと同じエンジンではあるが、やはり全く別物だと実感した。タイムズのステッカーが貼ってあるクルマだったので、多分低圧縮の1500ccか。
例えば近所で見かけるMAZDA3などは、純正マフラーながらなかなか勇ましい排気音を奏でているが、このMAZDA2は実に大人しく、普通のコンパクトカーの音である。
さっき低圧縮の、と言ったが、MC前のMAZDA2は1500ccのガソリンエンジンが2種類あって、下位3グレードは圧縮比12の、それより上のグレードは圧縮比14のエンジンを採用していた。
普段はふざけて、ロードスターのことを「うっかりエンジンを搭載する向きを90°間違えて、たまたま後席の在庫が無かったからオミットし、成り行きで後輪を駆動している、屋根のない、なぜか脚がフロントダブルウィッシュボーン、リアマルチリンクになっているデミオ」などと言っている私ではある。しかし、実際に乗ってみれば全く違う。
当たり前だがAT車である。
三菱FTO(知識が旧い)とか、日産のハイパーCVT(知識が旧い)と違って、最近のマニュアルモード付ATは手前に引いてシフトアップになっているのだなあ。手前のモードセレクターをいじるとメーター内に「Sport」と表示が出て回転数が上がり、エンジンが元気よく回って加速が素早く立ち上がるようになる。なかなか気持ちいい。楽しい。
それに、車内はすごく静かでエアコンもよく効くし、ロードスターと違ってドアロックすればミラーは勝手に畳むし。
乗り心地はすこし大きなジーノみたいでチープな感は否めないが、これもまあまあ好みの感じで...。
ロードスターとは違う。しかし、それの何が悪いのか。
なぜ私はMTの、屋根も布一枚の、荷物も載らないし人も載らない全く実用性のないクルマにわざわざ乗っているのか??
これが、同化されるってことなのか...?
これが、クルマ趣味の終焉の入り口なのか。
何者でもない自分になっていく...。そしてある朝、かつてあれほどまでに真剣で切実だった想いがきれいに失われていることに私は気づき、もう限界だと知った時、ロードスターを降りる決意を
Nikon Z5+Z50/1.2
エッッッッッッロ
というわけで、無事に初回車検を終了した。
3年で5万キロ走ったので、世間一般的にはまあまあ走っているほうか。
ディーラーでクルマを受領したのは日没直前で、夕闇の迫る中で深みを増していくソウルレッドを纏う、コンパクトながらもグラマラスなボディラインに惚れ直してしまった。
走り出し...
「ああ、これだよ」
高校生の頃、クラリネットを熱心にやっていた頃に強く思っていたことだが、普段使っている楽器から廉価な楽器に持ち替えると、「まあこれでもいいか...」と思う。
だが、普段使っている楽器が良い楽器だと、楽器を戻した時には決まって、「やっぱりこれが良いな」と思いなおすのだ。ロードスターも同じだった。
幌の傷みも少し目立ってきたが、まあまだしばらく大丈夫だろう。
終わりはクルマの寿命か、精神的なものか、それはわからないが、まだそれを決めるには早い。